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クラッソーネの開発者がエンジニアリングに関することもそうでないことも綴っています!

解体工事現場を遠隔で施工管理できる仕組みを構築したよ

解体工事現場を遠隔で施工管理できる仕組みを構築したよ

こんにちは!
SREチームの宮原(@TakashiMiyahara)です🙋

本日は、「解体工事現場を遠隔で施工管理できる仕組みを構築した」というお話を紹介します。

国交省が公募した「令和5年度 空き家対策モデル事業」において、当社が提案した「IoTカメラと画像認識AIを用いた空き家解体の施工管理システム」の開発が採択されました。この記事では、その成果を広く一般に公表します。

はじめに

本日は、「解体工事現場を遠隔で施工管理できる仕組みを構築した」というお話を紹介します。

国交省が公募した「令和5年度 空き家対策モデル事業」において、当社が提案した「IoTカメラと画像認識AIを用いた空き家解体の施工管理システム」の開発が採択されました。この記事では、その成果を広く一般に公表します。

  • IoTカメラによる工事現場の様子を定点撮影し、画像データを収集
  • 収集した画像データをニアリアルタイムで表示し、モニタリング
  • 収集した画像に「不安全な行動」が見つかった場合に、主任技術者に通知

モニタリングシステムの画面

システム全体の構成は以下の通りです

実際の仕組みについては、以下で詳しく紹介します。

課題

多くの工事を受注するようになったものの、工区ごとの進捗を確認するために、主任技術者のクルーが県内や県境を跨いで移動していました。移動費はもちろん、クルー自身の長時間運転による身体的な疲労も問題となっていました。1級施工管理技師などの高い専門性を持つクルーを、本来の業務ではない移動などの作業に割り当てることは、効率的な業務遂行には逆行していました。

仮説と進め方

この課題を解決するために、我々SREチームが立ち上がりました。既存の業務フローの問題点を把握し、「工事現場の様子を遠隔で確認できれば、主任技術者のクルーの負担を軽減し、コストも削減できるのではないか?」という仮説を立てました。

その下で以下の小仮説を設定し、1週間のスプリントで検証と開発を進めました。

  1. IoTカメラが工事現場で一定期間稼働できるか
  2. IoTカメラの画像から現場の状況を確認できるか
  3. 工区ごとの様子を一覧できると便利か
  4. 「不安全行動」を自動検出し通知することが有効か

IoTカメラが有効に機能すれば、主任技術者が現場に足を運ぶ頻度を減らすことが可能です。さらに、オフィスや出張先などから、担当している工区の進捗を確認できれば、現場で作業している職人さんに施工指示を遠隔地から出すこともできるようになると考えました。

証明

施工チームやパートナーの工事会社と協力し、1週間ごとのスプリントでアジャイルに検証と開発を進めました。快く検証に協力してくださった皆様に感謝の意を表します。ありがとうございました。

仮説A:IoTカメラが工事現場で一定期間稼働できるか

結論:間欠動作が可能なIoTカメラとバッテリーの利用で実現可能です。

解体工事現場では通常の電源を利用できないため、カメラは独立して撮影とデータの送信を継続する必要があります。この要件を満たすために、「ハイクカム LS4G」を採用しました。

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現場に設置している機材の構成です。

項目 商品名 URL
カメラ ハイクカム LS4G https://hyke-store.com/?pid=167840178
バッテリー ハイク コンプリートバッテリーケース 12V https://hyke-store.com/?pid=170898420
ハイク ソーラーパワーパック HC-5W10A https://hyke-store.com/?pid=175274500
三脚 Amazonベーシック 軽量 三脚 https://amzn.asia/d/84pwugy
クランプ Ulanzi スーパークランプ https://amzn.asia/d/aX877ZA
NEEWER スーパークランプ https://amzn.asia/d/04HByb6
雲台 SmallRig 自由雲台 https://amzn.asia/d/5gu1CnZ
コンテナボックス NTボックス #25 https://amzn.asia/d/5gu1CnZ
SIMカード ロケットモバイル 神プラン https://rokemoba.com/

設置例です。

屋内 屋外 屋外(足場)

仮説B:IoTカメラの画像から現場の状況が確認できるか

結論:死角はありますが、ある程度の状況は把握可能です。

カメラから送られた画像を受け取り、Slackに順次流す仕組みを構築しました。

クルーはSlackの専用チャンネルを定期的に確認し、現在の様子を確認できるようになりました。
この方法では、過去の画像を確認するためにSlackの投稿を遡る必要があったりと手間がかかることがわかりました。

今回運用しているカメラは単眼のカメラになります。工事現場によっては、設置できる場所が限られてしまうため死角が発生してしまいます。
この場合は、現場の職人さんに協力していただき工事の進捗に応じてカメラの位置を変えていただくことでカバーできるようになりました。
将来的には、360度撮影が可能になると設置場所による制約が緩和されていくと考えています。

仮説C:工区ごとの様子を一覧できると便利か

結論:非常に便利です。

Slackの利用に加え、最新の画像を一覧表示するビューワーアプリケーションを開発しました。

機能 ツール名
認証認可 Amazon Cognito
ストレージ Amazon Simple Storage Service
ホスティング AWS Amplify
動画作成 FFmpeg + AWS Lambda
フレームワーク React

FFmpeg と AWS Lambdaを利用して、タイムラプス動画の作成も行なっています。
タイムラプス動画は、当日の07:00~19:00の間で作成され、最新の動画が閲覧できるようになっています。

タイムラプス動画の例

最新の静止画に加えてタイムラプス動画も併用することで、主任技術者は任意の時刻の映像を速やかに確認できるようになりました。

現場を担当するクルーにはiPhoneやiPadを支給し、外出先からいつでも閲覧できる体制を構築しました。
オフィスには42インチ4KモニターとChromebookを利用したモニタリングコーナーを設置しました。
内勤の施工チームのクルーが、オフィスにいながら現場の様子を確認できるようになりました。

iPadから任意の現場の様子を確認している例です。

オフィスに設置したモニタリングコーナーの様子です。

仮説D:「不安全行動」を自動検出し通知すると便利か

結論:非常に便利です。

「不安全な行動」を自動で検出し通知するシステムを開発しました。

クラッソーネでは、以下の様子を「不安全な行動」と判定するAIモデルを開発しました。

  • ヘルメットを未着用である
  • ヘルメットを不完全に着用している(間にタオルを巻いているや顎紐を占めていないなど)
  • 高所作業時に安全帯(フルハーネス)を未着用である

人や顔検出などもモデルは既に高性能なものが公開されていますが、ヘルメットや安全帯の装着状況については全くないといった状況でした。
そこで、弊社のクルーや実際の工事現場の方々にご協力いただき、学習用のデータ取集を行いました。
屋内外や、ヘルメットの色や服装の種類を変えていただき、9,000枚以上の画像を収集できました。

安全帯なし 安全帯あり

※主任技術者の監督のもと、安全に最大限配慮し撮影を行いました。

作成しました判定モデルをOSSとして公開し、工事現場の安全管理にお役立てできればと考えております。
https://github.com/crassone/vista-models

MITライセンスにて公開しておりますので、ぜひご活用ください。

こちらのモデルを利用して、現場から送られてきた画像に対して逐次判定を行うようにしました。
不安全な行動が見つかった場合は、その理由と対象の画像を主任技術者に向けて配信する仕組みを構築しました。

通知の例 通知される画像の詳細

※主任技術者の監督のもと、安全に最大限配慮し撮影を行いました。

逐次通知するもしくは、日時でレポートとして主任技術者に配信するなどして活用していきます。

まとめ

2023年6月に始動した本プロジェクトは、多方面からのご支援のおかげで、一定の成果を出し始めています。小規模ながらも迅速にリリースを重ね、現場からの貴重なフィードバックを受け入れながら改善を進めることができました。通常、Webアプリケーションやサービスの監視、可用性、パフォーマンス向上に注力している私たちSREチームにとって、このプロジェクトは新たな挑戦でした。

現場の職人さんや施工チームの方々と直接コミュニケーションを取りながら、日々のディスカッションを重ねる中で、単にコードを書くだけでは得られない、開発の楽しみと充実感を味わうことができました。

プロジェクトを進める中で、雨の日に傘を使った際に頭部が検出できなかったり、屋外に設置したソーラーバッテリーが野生動物のフンで汚れ、発電が止まってしまうなど、リアルワールドでのデプロイメントがもたらす予期せぬ課題に直面しました。これらの経験は、私たちにとって大きな学びとなりました。

クラッソーネは、このプロジェクトを通じて、解体工事現場におけるデジタルトランスフォーメーションを少しでも前進させることができたと感じています。工事現場で働くすべての人々がより豊かな暮らしを実現できるよう、私たちが開発したソフトウェアが一助となれば幸いです。

おわりに

クラッソーネでは、引き続きプロダクトとチームの双方を改善していくために、共に働くエンジニアを募集しています。また、施工チームで活躍している平川さんのインタビュー記事もございますので、ぜひご覧ください。

https://www.crassone.co.jp/recruit/engineer/

https://www.crassone.co.jp/blog/16172/


RubyやTerraformが好きで、メンバーが楽になる仕組みを考えるのが好きなエンジニア